大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ラ)398号 決定

抗告人は東京都中央区日本橋大伝馬町三丁目六番地家屋番号同町六番の四、木造瓦葺二階建店舗兼居宅一棟建坪十二坪二合五勺、二階八坪七合五勺(以下単に甲の建物という)を建築所有し、昭和二十三年九月八日その保存登記をした。当時は登記簿上の表示は右建物の現状と合致していたのであるが、抗告人は昭和二十五年頃右建物を階上階下とも十二坪二合五勺(以下単に乙の建物)に増築したけれども、登記簿上は従前のままにしておいた。そして、昭和二十六年頃抗告人は更に右建物に密着させて、木造瓦葺二階建居宅一棟建坪十坪五合二階十坪五合(以下単に丙の建物という)を築造したが、依然として登記簿上は従前のままにしておいた。抗告人はその後昭和二十八年十一月二十一日株式会社信和商会との根抵当権設定契約により株式会社富屋が信和商会に対して現在負担し且つ将来負担すべき一切の債務につき極度額を七百万円と定めてその連帯保証をなして担保として抗告人はその所有の建物(登記簿上は甲の建物として表示されているもの)に根抵当権を設定してその登記手続をした。右信和商会は昭和三十年三月十七日までに生じた金七百六十五万三千五十九円の債権の弁済を受けるため、昭和三十一年二月一日東京地方裁判所に右抵当権の実行として右抵当物件につき競売の申立をなし、右競売手続進行中、昭和三十一年五月八日右債権者信和商会の代位申請により、右抵当権の目的は増築により木造瓦葺二階建店舗兼居宅一棟建坪二十二坪七合五勺、二階二十二坪七合五勺になつたものとしてその旨変更登記が行われた。(右変更登記後の建物を以下単に丁の建物という)そして右競売の結果、丁の建物は相手方において競落し、その申請に基いて右建物につき本件不動産引渡命令がなされたものである。

ところで、抗告人は、「右信和商会の代位によりなされた変更登記前たる同年三月二十七日抗告人のため右丙の建物について、別紙目録記載のとおり保存登記がなされたものであるから、右信和商会の代位申請による変更登記は無効であり、また甲乙の建物と丙の建物は別個のものであるから、信和商会の取得した抵当権の効力は丙の建物たる別紙目録記載の建物には及ばない。従つてこれに対する本件不動産引渡命令に基く強制執行は違法である。」旨主張する。前記信和商会の代位による変更登記がなされる以前たる昭和三十一年三月二十七日抗告人に対する仮差押債権者たる岩下高久の代位申請に基いて丙の建物が甲乙と別個の建物であるとして、抗告人のため新たに保存登記がなされたことは記録上明らかであるけれども、本件記録に徴すれば、丙の建物は増築後の甲の建物従つて乙の既設建物に密着して増築されたもので、その接着部分においては両者は柱を共通にしてこれを区分する何等の障壁がなく、また屋根の部分も増築部分の瓦が既設部分より一枚多くはみ出して葺いてある程度で両者の間に何等境界らしきものも設けられず一様に葺かれており、その他全体の間取り両者の連絡状態や設備の関係からみて、増築部分(丙の建物)は既設建物(甲従つて乙の建物)に従属し、これを離れて経済的に独立の効用を有するものでない関係にあることを一応認めることができる。従つて、右増築部分(丙の建物)は増築と同時に既設建物に附加してこれと一体をなし既設建物の構成部分となつたものであつて、増築部分だけが独立の建物として別個の所有権ないし抵当権の対象となる余地は存しないものといわなければならない。

(浜田 仁井田 伊藤)

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